2013年04月21日

[対談」柳沢幸雄校長(開成中学・高校) vs 和田孫博校長(灘中学・高校)

東大で燃え尽きる学生たちとは:

今回、日本を代表する東西の名門進学校校長が、東大の秋入学や推薦入試、グローバル時代における日本のエリート教育の在り方などを語り合った。
◇◇
柳沢今しばしば、「日本にはリーダーシップを持って国際的に活躍できる人材が不足している」と言われますが、私は必ずしもそうは思いません。優れた資質を持った子どもがたくさんいます。ただ、それを育てていない。

私はハーバード大や東大などで長年、学生を指導し、2011年に母校でもある開成の校長に就任しました。そこで思ったのは、18歳の集団として世界一だということです。開成の卒業生はハーバードの新入生と比べても上だと言っていいでしょう。

どこが優れているか。まず学力、学問的な知識量です。とはいっても、開成では手取り足取りの受験指導や知識の詰め込みをするわけではない。生徒が試行錯誤しながら自分なりの勉強法を見つけて知識を深めていくのです。

もう1つは、リーダーシップをとった経験が豊富なことです。学校行事や部活動などでは、常に生徒がイニシアティブをとっていく。例えば、運動会などはほとんど生徒だけで運営されている。競技のルール改正も生徒が毎年議論して、審判も全て生徒です。いわば、立法、司法、行政を全て体験するわけです。運動会が終わると、“こいつら大人になったな”と実感しますね。だから、開成で中高6年間、ガリガリ勉強ばかりしていた生徒なんてほとんどいません。

和田それは灘も同様ですね。我が校は伝統的に自主、自律を主眼に置いた教育を行っています。校則もなければ、制服もありません。「灘校生らしく」という不文律のみです。

学力面でいえば、最近は高校生を対象にした理数系の国際オリンピックに出場する生徒が増えてきました。あくまで余裕のできた時間に好きな生徒が挑戦しているだけですが、中には世界の優秀な高校生を相手に金メダルを獲る生徒も出ています。問題内容はかなり高度で、必ずしも学校のカリキュラムに対応しているわけではないのですが、知的好奇心や思考力が学校の授業の枠を超えて育っている1つのあらわれでしょう。

柳沢興味深く思うのは、筑波大附属駒場、麻布などの伝統的な進学校の先生と話をすると、自主、自律の方針は共通していることです。やっぱり生徒が自分で何かを考えて、自分で好きなことを見つけたときが一番伸びる。

和田あるスパルタ式の進学校では、毎朝担任の先生が昨日家で何時間勉強したか書かせてコンピュータに入力して校長に報告するそうです。そうやって管理されたほうが上手くいく子もいるかもしれませんが、灘でそうした管理教育を期待されても困りますね(笑)。本来、生徒には“もっと知りたい”という学習本能が備わっています。学校側は生徒の学習意欲をうまく刺激して、好奇心を引き出していくことが重要なんです。

東大に進学すると伸び悩む

柳沢ところが、世界一だったはずの生徒が東大に進学すると一転、伸び悩んでしまうケースが多い。4年後、卒業する頃には世界一どころか日本一でもなくなるのです。それはなぜか。

私が教えた経験から言うと東大生は大きく、燃え尽きたグループ、燃えているグループ、冷めたグループの3つに分けられると思う。

まず燃え尽きたグループは、入試を突破するための洗練された指導を受けてきた学生たちです。高校時代に自分に合った勉強法を身につけないままに東大に入ったために、教授が勉強法を教えてくれない大学ではどうしていいか分からなくなってしまう。“受験偏重教育の弊害”と世間でよく言われるのは、このケースでしょう。

一方、燃えているグループは例えば、地方の公立高校から数年ぶりに東大に入ったような学生たちです。彼らは親元から離れて1人暮らしをして、高校の話題で盛り上がる連中をよそに、1人で必死に居場所を探そうとする。18歳でこれまでの生活に見切りをつけ、主体的に学ぼうとするのです。やる気が他の学生とは違います。

問題なのは、第3の冷めたグループです。首都圏の伝統的な進学校のように、手取り足取りの受験指導を受けず、課外活動にも力を入れてきた学生たちが実はここに陥りやすい。開成も当てはまります。自分なりの勉強法も身につけたけれど、これまで通りの自宅通学で、キャンパスには高校の友達がたくさんいる。高校時代の延長のような感覚で、“東大にも受かったし、そこそこ勉強すればいいや”と考えてしまうのです。しかも、もともと頭が良いから必死にならなくてもそれなりの成績は取れる。これまでの成功体験がかえって更なる飛躍を妨げてしまう。

和田名門大学の学生でも、アルバイトやサークル活動が楽しかったりして、“勉強なんかせんで済むやん”という意識の学生も多い。実際、誰かのノートをちょっと写しただけで単位が取れてそのまま卒業できてしまう。大学受験というごまかしの利かない重しが取れてしまうと、一気にモチベーションが下がってしまう。それでも安易に卒業を許す大学教育のシステムも問題だと思います。

柳沢私は、開成の卒業生には「まず親元を離れなさい」と言っているんです。高校の頃と違う環境に自分の身を置いて、自分の殻を破らないといけない。ハーバード大でも学部時代はみんな寮生活を送っていますね。そこで全米や世界各地から集まった“燃えている”学生同士が刺激し合う。学部時代から燃えているから、修士課程に進むとより一層伸びていきます。

posted by mapjp at 23:45| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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